『隊務スリップ』反薬物も重要争点

林田力

新田たつお『隊務スリップ』は集団的自衛権行使が容認された近未来の日本をディストピアとして描く漫画である。大長編漫画『静かなるドン』作者の新作である。

集団的自衛権によって日本は海外でアメリカと共に戦争するようになった。東京は核テロで壊滅し、熱海に遷都する。内閣は兵力不足を補うために徴兵制を画策する。主人公を取り巻くストーリーは荒唐無稽であるが、社会風刺は鋭い。

本書の風刺の鋭さは、反戦平和だけの問題として描いていないことである。様々な社会問題がつながっている。企業経営者は従業員をリストラする大義名分として徴兵制を歓迎する。従業員を軍隊に出向させるためである。これは現実のブラック企業や追い出し部屋の経営者が考えそうなリアリティがある。

民間人を徴兵しても近代戦では使い物にならないという考えがある。これに対して本書は戦前の日本軍にならって薬物を投与することで勇敢な兵士を作り出そうとする。現実社会でも脱法ハーブなど脱法ドラッグが社会問題になっている。

このように見ると、集団的自衛権の問題を集団的自衛権だけで賛否を考えるのではなく、もっと大きな政策軸が浮かび上がる。集団的自衛権反対とブラック企業反対は既に現実政治で結び付いている。左翼教条主義的な立場には新しい問題であるブラック企業問題への無理解が見られるが、大勢は連携できていると言える。

これに対して脱法ハーブなどの薬物反対はどうであろうか。放射脳カルトと親和性のある脱原発派には大麻などを肯定する傾向にある。あまり左翼が薬物反対に積極的とは見られていない。ここは幅広い連帯を作る上で弱点となっている。






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