『女王の花』

林田力

和泉かねよし『女王の花』は古代中国風の架空の国の王女を主人公とした少女漫画である。史実とは無縁の物語であるが、中国の故事成語が引用され、歴史的な雰囲気を盛り上げる。2014年度の小学館漫画賞を受賞した。

タイトルの「女王の花」は千年に一度だけ咲き、どのような望みも叶える力があるという伝説の花である。作中では千年の花と紹介される。千年の花、千年の花という響きが頭の中でリフレインする。

主人公・亜姫は亜国の王の娘として生まれながら、実家が小国のため母と共に冷遇されていた。幼いながらも母の世話をしながら、明るく生きてきた。ある日、亜姫は金髪碧眼の奴隷の少年・薄星と出会う。

少女時代の亜姫の置かれた状況は過酷である。後ろ楯のない主人公が己の才覚と信頼できる人々の助力で女王になる物語パターンが予想される。しかし、その割に亜姫は本当の意味で賢くない。亜姫には相手をギャフンと言わせる才覚はある。それは心地よいくらいである。ところが、それによって亜姫の立場は悪くなってしまう。厳しい見方をすれば後先考えないという批判も出てくるだろう。

亜姫は決して完全無欠の存在ではない。一方で王子様を待つだけのお姫様でもない。現代女性が感情移入しやすい物語である。完全無欠の聡明さを備えていなければ英雄になれないならば味気ない。

物語のヒーローは金髪碧眼の奴隷の少年・薄星である。白人を知らない黄色人種の国であり、金髪碧眼は気持ち悪いものと忌避されていた。その中で亜姫は薄星を綺麗と言う。これが忠誠を誓う動機になる。前述のとおり、亜姫は完全無欠な聡明さには遠い存在であるが、薄星が忠誠を誓うことが説得的なエピソードである。

林田力


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