『機動戦士ガンダム アグレッサー』連邦の腐敗

林田力

万乗大智『機動戦士ガンダム アグレッサー』は一年戦争のサイドストーリーである。主人公はジオン公国軍兵士であったが、地球連邦に亡命し、元ジオン関係者らで構成される地球連邦軍アグレッサー部隊でジオン軍と戦っている。

この枠組みは、あまり面白いものではない。ガンダム世界において連邦は腐敗、卑怯、卑劣、非効率、官僚体質というマイナスイメージの象徴になっている。本来は敵であるジオンに感情移入するファンも多い。『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』『機動戦士ガンダム第08MS小隊』のように比較的近年の作品はジオンに感情移入するファンの存在なくして成り立たないと言ってよい。故にジオンを裏切って連邦で戦うという設定自体に残念な感覚がある。

しかし、本書は主人公が連邦に属するからこそ、連邦の腐敗や無能、差別意識を十分に描いている。連邦にも主人公らを受け入れる士官はおり、だからこそ主人公らも活躍できるが、そのような士官の方が逆に嘘臭く感じるほど連邦の腐敗に迫っている。

主人公らはジオンが民間人を虐殺したことを問題視している。これは人間として正しいが、第1巻でもジオン兵は人質を殺さずに逃走する一方で、連邦は人質の生命を気にせずに攻撃を仕掛けるなどジオン兵の方が騎士道精神を持っている。やはりガンダムは連邦を嫌悪し、ジオンを応援したくなる。

『機動戦士ガンダム アグレッサー 2』

万乗大智『機動戦士ガンダム アグレッサー 2』(少年サンデーコミックススペシャル)は戦闘シーンの続きである。主人公のガンダムはジオン軍からは赤帽子と呼ばれている。ガンダムで赤と言えば赤い彗星の印象が強く、しっくりこない。

ガンダムは人類が宇宙に進出した時代の物語であるが、やはり地上の闘いは迫力がある。戦争の悲惨さも含めてリアリティーがある。戦車戦に迫力がある。ガンダムは新型兵器モビルスーツによって戦車などの従来兵器が時代遅れになった設定であるが、戦車を活躍させている。『ガールズ&パンツァー』(ガルパン)の影響だろうか。

宇宙世紀ガンダムの世界では地球連邦が腐敗した無能な官僚制の組織として描かれる。このために本来は敵軍であるジオンに感情移入したくなる。ところが、アグレッサーの主人公は、ジオン兵でありながら連邦に寝返った。連邦にマイナスイメージを持つ読者の共感を得られるか、ハードルの高い設定である。

主人公らは一週間戦争のジェノサイドに反発してジオンを裏切ったことが明らかになる。主人公は「ジオン兵として恥ずべきことはしていない」と主張する。権威的で官僚的で個性のない連邦軍将校とは異なる。腐った連邦に所属してもジオン軍人らしい誇りとこだわりを持ち続けていることがキャラクターの魅力になる。

深夜アニメ

深夜アニメが本格的に増えてから数年が経過する。それなりに粒がそろっているものの、後世に残るほどの傑作は乏しい。ここ数年のアニメ業界は進行性閉鎖の傾向がある。どんどんマニアックになっていってファンが離れていき、新しいファンがなかなか寄り付かない。しかし、「最近のアニメはつまらない」「昔はよかった」と否定することは建設的ではない。一般受けを狙えば逆に熱心なファンを遠ざけることになるためである。その意味でマニアックになるということは熱心なファンを満足させようとする方向として肯定的に評価できる。

『碇シンジ育成計画 第12巻』碇ゲンドウの活躍

本書(GAINAX・カラー原作、高橋脩作画『新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画 第12巻』角川書店、2011年9月22日発売)は社会現象にまでなったアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のパラレルワールド作品である。
オリジナルでは人類の興亡を賭けた使徒との戦いと主人公の孤独という重苦しい背景があった。これに対して、『碇シンジ育成計画』はラブコメ学園物の明るいタッチである。シンジ、レイ、アスカの三角関係に転校生・霧島マナが加わって恋愛ドラマが盛り上がる。
人類を幸福にするためのものという碇ゲンドウらの研究の謎やゼーレの妨害工作などシリアス要素もある。この巻でもゼーレの妨害工作が強まるが、赤木リツコに「大したことはない」と評されるような存在で終わり、平和な明るさが続いていく。ゲンドウが偉そうに命令するだけの人物ではない点が見どころである。(林田力)

『デッドマン・ワンダーランド』第9巻、現実の先を行く絶望的な展開

片岡人生と近藤一馬が月刊少年エースで連載中の漫画『デッドマン・ワンダーランド』第9巻が3月26日に発売された。『デッドマン・ワンダーランド』は東京大震災で崩壊した近未来の東京の完全民営化刑務所「デッドマン・ワンダーランド」を舞台とした監獄サバイバル・アクションである。4月16日からテレビ神奈川などでアニメも放送される。
主人公は中学生の五十嵐丸太である。震災で大部分が水没した東京から地方に疎開して平凡な生活を送っていたが、無実の罪で「デッドマン・ワンダーランド」に収監される。監獄内では囚人同士に強制される決闘・死肉祭(カーニバル・コープス)など理不尽な出来事が連続する。
しかし、囚人達も虐げられるだけではない。良識派の看守らを巻き込み、刑務所長の玉木常長を追い詰めていく。この巻は満身創痍となりながらも、主人公側の反撃という希望を抱ける展開を承けたものだが、新たな絶望と混乱を提示した。玉木との戦いには決着がつけられるが、玉木も踊らされた一人に過ぎなかった。
『デッドマン・ワンダーランド』は漫画版『交響詩篇エウレカセブン』を手掛けた二人によって2007年から連載が開始されたが、大震災による社会の荒廃という現実の先を行く設定で注目度が急上昇している。
震災のリアリティを追求した作品ならば他にも『太陽の黙示録』などがある。それらに比べると、『デッドマン・ワンダーランド』は血液を操って戦うなどファンタジー色が強い。それでも細部に不気味なリアリティがある。たとえばネット依存症の引き籠りが震災時の停電でパソコンが使えなくなり、自分の世界が壊れたと絶望するシーンがある。これは伝統的な災害被害の視点では出てこないものである。
一方で東日本大震災直後の時期に地震を描写した作品を刊行することに対し、作者には躊躇があった。片岡のブログ「片岡商店 人生支店」の3月23日付記事「デッドマン・ワンダーランド9巻について」では「揺れに対して恐怖等感じている方は買い控えていただければと思います。」と述べている。
編集担当者に地震の描写を9巻から削除し、10巻に回すことができないか提案したが、印刷も完了しており、無理との回答であったという。ブログ記事では「マンガは逃げませんし、いつでも手にとることができます」として、「気が向いたときにでも手にとっていただければ幸いです」と結んでいる。(林田力)

『デッドマン・ワンダーランド』第10巻、理不尽さの際立つ展開

片岡人生と近藤一馬が月刊少年エースで連載中の漫画『デッドマン・ワンダーランド』第10巻が5月26日に発売された。同日発売の月刊少年エース2011年7月号の表紙絵も『デッドマン・ワンダーランド』で、第10巻かけかえカバーが付録になっている。
『デッドマン・ワンダーランド』は東京大震災後の近未来を描くアクション作品である。これまでは完全民営化刑務所「デッドマン・ワンダーランド」に送られた囚人達の生き残りをかけた闘いが中心であった。しかし前巻で刑務所を仕切っていたプロモーター・玉木常長の陰謀に終止符が打たれ、「デッドマン・ワンダーランド」は閉鎖される。この巻からは新たな章に突入する。
バラバラになったG棟の住人達は東京大震災の元凶であるレチッドエッグを倒すため、マキナ元看守長と共に再び「デッドマン・ワンダーランド」に集結する。そしてシロとレチッドエッグの関係や剥切燐一郎所長の陰謀、主人公・五十嵐丸太の母親・空絵の過去など物語の核心に迫る謎が明かされる。
『デッドマン・ワンダーランド』の魅力は読者を絶望させる理不尽さにある。丸太は平凡な中学生であったが、突如現れた「赤い男」(レチッドエッグ)に級友を皆殺しにされる。しかも、級友殺害の罪を着せられ、死刑囚として「デッドマン・ワンダーランド」に送致される。「デッドマン・ワンダーランド」では囚人への非人道的な扱いが日常化していた。
この巻の理不尽さも際立っている。丸太の運命を一変させた憎むべき存在であるレチッドエッグの正体は、幼馴染みで非人道的な囚人生活の心の支えになっていたシロであった。レチッドエッグを倒すことがゴールであるが、それはシロの死も意味し、ハッピーエンドにはならない。
さらには母親の空絵がレチッドエッグの誕生に関わっていたことが示される。想定外の災厄が降りかかることは理不尽であるが、それ以上に親しい人物が災厄の元凶であった場合の絶望感は大きくなる。この大きな絶望に丸太がどのように立ち向かうのか、今後の展開に注目である。(林田力)

『黒執事』第12巻、ゾンビによるパニックと貴族精神

枢やなが『月刊Gファンタジー』に連載中の漫画『黒執事』第12巻が、7月27日に発売された。この巻は全編がゾンビとのアクション中心の豪華客船編であるが、作品の魅力である19世紀イギリスの貴族精神が色濃く描かれた内容になった。
『黒執事』はヴィクトリア朝時代のイギリスをモデルとした社会を舞台に、完璧な執事セバスチャン・ミカエリスと彼の主人である幼い貴族シエル・ファントムハイヴの日常や事件を描く。イケメン執事が完璧な所作で主人に尽くす執事ブームの一翼を担っている作品である。
セバスチャンの正体は悪魔であり、「黒」執事とのタイトルが示すように物語には怪奇的な側面もある。この巻が属する豪華客船編では豪華客船カンパニア号でゾンビ(動く死体)が人々を襲うパニック物になっている。『バイオハザード』の要素だけでなく、豪華客船が舞台ということで『タイタニック』の要素も楽しめる。
ゾンビは秘密結社・暁(アウローラ)学会の人体蘇生によって動き出したものである。カンパニア号上の研究発表会で蘇生された人体がゾンビとなって人間に襲いかかったが、実はゾンビは貨物の中に多数存在した。ゾンビの研究の背後には企業の陰謀が仄めかされ、ストーリーに奥行が出た。
セバスチャンの超人的な大活躍や人気死神の再登場など見所が多い巻であるが、注目は誇り高き貴族精神である。セバスチャンとの別行動を余儀なくされたシエルは数々の危機を切り抜け、許婚のリジー(エリザベス・ミッドフォード)を守るために奮闘する。また、乗客を守るために戦うミッドフォード侯爵一家はノブレス・オブリージュの精神を体現したものであった。
そして圧巻はラストである。絶体絶命の窮地において意外なキャラクターが意外な能力を発揮する。「もうダメだ」と思わせておいて、ダメではなかったという展開はストーリー展開の基本であるが、この巻のラストの意外感は衝撃的である。そこにも貴族的な信念と、生き抜こうとするシエルに感化された新たな思いが存在する。このキャラクターが活躍する次巻にも注目である。(林田力)

本田真吾『ハカイジュウ』第5巻

『月刊少年チャンピオン』で連載中の本田真吾『ハカイジュウ』が2011年11月8日に第5巻を発売した。一つの章を完結させた『エグザムライ戦国』第7巻に対し、こちらは新章に突入する。『ハカイジュウ』は未知の生物が現代の立川市を襲うモンスターパニック漫画である。

第4巻までは立川市で起きた惨事から逃げる人々を描いたが、この巻では立川市の外側にいたキャラクターが主人公となる。怪物による恐怖だけでなく、真相を隠蔽しようとする政府の不気味さがクローズアップされる。自衛隊が立川市一帯を壁で覆い、立ち入り禁止区域としていた。壁の内側では自衛隊員による常軌を逸した横暴が展開されていた。

これまでも『ハカイジュウ』では体育教師と名乗る武重のような異常な人間の恐怖を描いてきた。この巻では権力を背景とした人間の不気味さが描かれる。そして、その種の大人達を普通の少年である絢士(けんじ)が全く信用していないことが小気味よい。普通ならば大人の甘言に乗せられて全てを奪われてしまいがちである。確かな批判精神を持つ絢士の行動力に注目である。(林田力)

林田力


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